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「これってハラスメント?」が増える職場|管理職が知っておきたい指導とパワハラの境界線

部下に注意をしたらパワハラと思われるのではないか。厳しく指導すると問題になるのではないか。最近では、このような不安を抱える管理職も少なくありません。
ハラスメントへの意識が高まることは、働きやすい職場をつくるうえで重要です。一方で、ハラスメントを恐れるあまり、必要な指導まで避けるようになると、部下の成長や組織のマネジメントに影響する可能性があります。
業務上必要な指示や指導を行うこと自体がパワーハラスメントになるわけではありません。パワーハラスメントは、優越的な関係を背景とした言動であり、業務上必要かつ相当な範囲を超え、それによって労働者の就業環境が害されるという3つの要素をすべて満たすものと整理されています。また、客観的に見て業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な指導は、パワーハラスメントには該当しないとされています。
大切なのは、指導をしないことではなく、何を、なぜ、どのように伝えるかです。
この記事では、管理職が知っておきたい適切な指導とパワーハラスメントの境界線や、部下への伝え方、企業が管理職研修で取り上げたいポイントについて解説します。

なぜ管理職は部下への指導をためらうようになったのか

職場におけるハラスメントへの関心が高まり、社員が相談窓口を利用したり、自分が受けた言動について声を上げたりしやすくなっています。
これは重要な変化ですが、その一方で管理職からは、どこまで注意してよいのか分からない、少し強く言っただけでもパワハラと言われるのではないか、といった声も聞かれます。
特に難しいのが、指導する側と受ける側で感じ方が違うことです。
管理職は仕事上必要な注意のつもりでも、部下は強く否定されたと感じることがあります。反対に、部下への配慮を意識しすぎた結果、問題行動を注意できず、周囲の社員に負担がかかることもあります。
ハラスメント対策は、管理職が何も言わなくなることを目指すものではありません。必要な指導を、相手の人格を傷つけず、業務上適切な方法で行える職場をつくることが重要です。

指導とパワハラの境界線はどこにある?

指導とパワハラを分けるときに、単純に声が大きかったか、部下が不快に感じたかだけで判断することはできません。
判断にあたっては、言動の目的、問題となった行動の内容や程度、指導が行われた状況、言葉や態度、回数、継続性、本人との関係など、さまざまな要素を総合的に考える必要があります。

 

例えば、仕事上のミスについて事実を確認し、改善方法を具体的に伝えることは通常の業務指導と考えられます。
しかし、同じミスについて長時間にわたり繰り返し叱責する、本人の能力や人格まで否定する、他の社員の前で必要以上に恥をかかせるといった言動になれば、問題となる可能性が高まります。
境界線を考えるうえで重要なのは、仕事上必要な指導なのか、その目的に対して伝え方が適切なのかという2 つの視点です。

厳しく注意することはパワハラになる?

部下に厳しく注意しただけで、直ちにパワハラになるわけではありません。
安全に関わる重大なミスや、顧客に大きな損害を与える可能性のある行動など、業務上強く指導する必要がある場面はあります。
ただし、必要性があったとしても、伝え方には注意が必要です。
なぜ問題なのか、何を改善してほしいのかを伝えるのではなく、「お前は使えない、何をやっても駄目だ」といった人格そのものを否定する言葉になれば、業務上の指導から外れていきます。
指導すべきなのは人格ではなく行動です。
「今回の報告書には確認不足があったので、提出前にこの3 項目を確認してください。」と伝える場合と、「だから君は仕事ができないんだ。」と伝える場合では、同じミスへの指摘でも意味は大きく異なります。
管理職には、問題となった行動と本人の人格を分けて伝える力が求められます。

人前で部下を注意するのはパワハラ?

これも一律に判断できるものではありません。
その場ですぐに注意しなければ事故や重大なミスにつながる場合など、人前であっても即座に指導する必要があるケースはあります。
一方で、緊急性がないにもかかわらず、他の社員が大勢いる前で長時間叱責したり、本人を見せしめのように扱ったりすることは避けるべきです。
重要なのは、その場で伝える必要がある内容なのかを考えることです。
その場では事実だけを短く伝え、詳しい指導は別の場所で行うといった対応もできます。
管理職として正しいことを伝えているとしても、伝える場所やタイミングによって受け止められ方は大きく変わります。

同じことを何度も注意するのはパワハラ?

同じミスを繰り返している部下に対して、何度も指導が必要になることはあります。
そのため、同じ内容を複数回注意したことだけでパワハラになるわけではありません。
しかし、改善するための具体的な方法を示さず、ただ叱ることを繰り返しているのであれば、指導として十分とはいえません。

何ができていないのか、どの状態になれば改善と判断するのか、本人が困っていることはないかまで確認する必要があります。
指導の目的は、管理職の不満を伝えることではなく、部下が次に適切な行動を取れるようにすることです。
繰り返し注意しても改善しない場合ほど、感情的に叱るのではなく、原因を整理することが重要になります。

部下に仕事を任せないこともパワハラになる?

パワーハラスメントの典型例には、業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じたり、仕事を与えなかったりする行為も含まれます。
ただし、すべての業務変更が問題になるわけではありません。
本人の経験や能力、安全性、業務上の必要性などから仕事の内容を変更することは通常のマネジメントとして行われます。
大切なのは、なぜその仕事を担当させるのか、あるいは担当から外すのかについて、業務上説明できる理由があることです。
感情的な対立を理由に仕事を取り上げたり、退職させることを目的として何も仕事を与えなかったりするような対応は、適切なマネジメントとはいえません。

管理職が意識したいのは伝える目的と方法

部下への指導で迷ったときは、まず何のために伝えるのかを考えることが重要です。
仕事の品質を改善したいのか、安全を確保したいのか、顧客への対応を改善したいのか。目的が明確であれば、必要な指導内容も整理しやすくなります。
次に、事実と感情を分けます。
最近やる気がないように見える、といった曖昧な言い方ではなく、期限を過ぎた提出が今月3 回あったなど、確認できる事実をもとに話します。
そのうえで、何が問題なのか、今後どのように改善してほしいのかを伝えます。
適切な指導は、部下を追い込むためのものではなく、期待する行動を理解してもらうためのコミュニケーションです。

ハラスメントを恐れて指導しないことにも問題がある

管理職研修では、パワハラをしないための禁止事項だけを教えるケースがあります。
もちろん、してはいけない行為を理解することは必要です。
しかし、禁止事項ばかりを伝えると、管理職が何も言わない方が安全だと考えてしまうことがあります。
その結果、遅刻や業務上のミスを注意しない、成果が出ていなくても改善を求めない、周囲に迷惑をかける行動を放置するといった状態になれば、別の社員の不満につながります。
管理職には、パワハラを避ける知識だけではなく、適切に指導する技術が必要です。
何を言ってはいけないかだけでなく、どう伝えればよいのかまで学ぶことが、これからのハラスメント研修では重要になります。

部下からパワハラだと言われたらどうする?

管理職にとって特に不安なのが、自分の指導について部下からパワハラだと指摘された場合です。
このとき、そんなつもりではなかった、自分の時代はもっと厳しかったと反論することは適切ではありません。
まず、自分の意図と相手の受け止め方は別のものであることを理解する必要があります。
どのような言動が問題とされたのかを確認し、社内の相談窓口や人事担当者など、定められた手順に従って対応します。
一方で、部下からパワハラと言われたという理由だけで、直ちにすべての指導が不適切だったと判断することも避ける必要があります。
パワーハラスメントに該当するかどうかは、業務上の必要性や伝え方、状況などを総合的に確認する必要があります。
管理職一人に判断を任せず、組織として対応できる仕組みを整えておくことが重要です。

管理職向けハラスメント研修で学ぶべきこと

管理職向けのハラスメント研修では、法律やパワハラの定義だけを説明して終わらせないことが大切です。
実際の職場では、明らかな暴言よりも、これは指導なのかパワハラなのか判断に迷う場面の方が多くあります。

そのため、実際に起こりそうなケースをもとに、どこに問題があるのか、別の伝え方はできないかを考える研修が有効です。
例えば、何度注意してもミスを繰り返す部下への指導、遅刻が続く社員への注意、仕事への姿勢に問題がある社員との面談など、日常のマネジメントに近い事例を取り上げます。
管理職自身が考え、他の参加者と意見を交換することで、単なる知識ではなく実践的な判断力を身につけやすくなります。

管理職のハラスメント研修なら講師セレクトへ

ハラスメント研修は、すべての企業で同じ内容を実施すればよいものではありません。
社員数、業種、組織風土、管理職の経験、過去に起きた問題などによって、必要な研修内容は異なります。
講師セレクトでは、ハラスメント、コンプライアンス、管理職教育、コミュニケーション、アンガーマネジメントなど、幅広い分野の専門講師から、企業の課題に合った講師をご提案しています。
パワハラの法律や定義を学ぶ研修だけでなく、ケーススタディやグループワークを取り入れ、管理職が実際の職場でどのように伝えればよいのかを考える参加型研修も検討できます。
ハラスメント対策は十分行っているものの、管理職が部下への指導に消極的になっている場合や、管理職ごとに指導方法に差がある場合には、研修内容そのものを見直すことも重要です。
講師セレクトでは、企業の現状や対象者、研修時間、予算などを確認しながら、適した講師や研修内容をご提案します。

管理職が安心して指導できる職場づくりを

ハラスメント対策の目的は、管理職に何も言わせないことではありません。
部下が安心して働けることと、管理職が必要な指導を行えることは、本来両立するものです。
そのためには、パワハラに該当する行為を知るだけでなく、相手の人格を否定せず、事実と改善すべき行動を具体的に伝える力が必要です。
管理職自身が指導の境界線を理解できれば、必要以上に萎縮することなく部下と向き合いやすくなります。

講師セレクトでは、パワーハラスメント防止だけでなく、適切な指導方法やコミュニケーションまで含めた管理職向け研修について相談できます。
ハラスメント研修を毎年実施しているものの内容が変わらない、管理職から指導方法について不安の声が出ている、禁止事項だけではなく実践的な研修を行いたいという企業は、研修内容の検討段階からご相談ください。

まとめ

職場でハラスメントへの意識が高まる中、管理職が部下への指導に迷う場面も増えています。
しかし、適正な業務指示や指導までパワーハラスメントになるわけではありません。重要なのは、業務上必要な指導であるか、その目的に対して伝え方や方法が適切であるかを考えることです。
管理職がハラスメントを恐れて何も言わなくなれば、部下の成長や組織運営にも影響します。
これからのハラスメント対策では、してはいけないことを覚えるだけではなく、必要な指導を適切に行う力を身につけることが重要です。
講師セレクトでは、ハラスメント対策、管理職教育、コミュニケーションなど、企業の課題に応じた専門講師をご提案しています。管理職が安心して部下を指導できる環境を整えたい場合は、自社に合った研修内容や講師選びからご相談ください。