- コラム
ChatGPTやGemini、Microsoft Copilotなどの生成AIは、文章作成、情報整理、企画立案、議事録作成、画像制作など、さまざまな業務で活用されるようになりました。生成AIを上手に使えば、作業時間の短縮だけでなく、社員の発想を広げたり、従来は難しかった業務に取り組んだりすることも可能になります。
講師セレクトにおいても、日々の業務の中でAIを活用しています。また、企業から「生成AIを社内でどのように使えばよいか」「情報漏えいが不安」「社員向けのルールや研修を整備したい」といった相談が増えています。
こうした状況の中で重要なのは、AIを危険なものとして一律に禁止することではありません。業務での活用が広がり切ってから問題に対応するのではなく、早い段階から考えられるリスクを明確にし、安全に活用するためのルールと教育を整えることが大切です。
この記事では、生成AIの利用によって企業に生じるコンプライアンスリスクと、今から整備すべき社内ルール、社員研修のポイントについて解説します。
Contents
コンプライアンスは、単に法律に違反しないことだけを意味するものではありません。法令の遵守に加えて、社内規程や契約、情報管理のルール、社会的な倫理や企業としての説明責任まで含めて考える必要があります。
生成AIの利用では、個人情報や機密情報の管理、著作権、情報セキュリティ、誤情報、差別や偏見、取引先との契約など、複数の問題が関係します。
経済産業省などが公表している「AI事業者ガイドライン」でも、AIを安全に活用するためには、人間中心、安全性、公平性、プライバシー保護、セキュリティ、透明性、アカウンタビリティなどの観点が重要とされています。2026年3月には第1.2版が取りまとめられており、AIを利用する企業にも継続的な体制整備が求められています。
企業として考えるべきなのは、「AIを使ってよいか、悪いか」という単純な二択ではありません。どの業務に、どのAIサービスを使い、どの情報を入力できるのか。出力結果を誰が確認し、最終的に誰が責任を負うのか。こうした具体的な運用ルールまで決めておく必要があります。
生成AIは、会社が正式に導入を決定する前から、社員が個人の判断で使い始めている場合があります。
文章を整える、メールの下書きを作る、企画案を考えるといった身近な用途であれば、社員は便利な検索サービスの延長として利用しがちです。しかし、本人に悪意がなくても、顧客名が記載された資料や契約内容、会議録、未公開情報を入力してしまう可能性があります。
つまり、企業がルールを定めていないからといって、社内でAIが使われていないとは限りません。むしろ、利用実態を把握できないまま、いわゆる「シャドーAI」が広がることの方が大きなリスクになります。
講師セレクトでもAIを実際の業務に活用しているからこそ、AIの利便性と同時に、使い方を誤った場合の危険性も理解しています。大切なのは、問題が起きてから禁止事項を増やすことではなく、活用を始める段階でリスクを洗い出し、社員が迷わず判断できる環境をつくることです。
最初に注意したいのが、生成AIへの情報入力です。
顧客名、売上情報、未公開の新商品、事業計画、設計資料、プログラムのソースコード、社内会議の内容などを生成AIに入力すると、サービスの契約条件や設定によっては、入力内容が保存・利用される可能性があります。
すべての生成AIサービスで入力情報が学習に使われるわけではありませんが、サービスや契約プランによって取り扱いは異なります。そのため、「生成AIには何も入力してはいけない」とするだけではなく、利用を認めるサービスとアカウント、入力可能な情報の範囲を企業が具体的に定める必要があります。
顧客情報や従業員情報、応募者の履歴書、人事評価、健康情報などを安易に生成AIへ入力すると、個人情報保護上の問題につながる可能性があります。
個人情報保護委員会は、生成AIサービスに個人情報を入力する場合、利用目的の範囲内であることや、サービス提供者が入力情報をどのように取り扱うかを十分に確認するよう注意を促しています。
氏名を削除すれば安全とは限りません。部署、役職、年齢、具体的な事案などを組み合わせることで、本人を特定できる場合もあります。匿名化や情報の置き換えについても、社員任せにせず判断基準を設けることが重要です。
生成AIが作成した文章、画像、音楽などは、自由に使えるとは限りません。既存の著作物と似た生成物を広告やWebサイト、商品に使用した場合、著作権侵害が問題になる可能性があります。
文化庁は、AI生成物の利用についても、既存の著作物との類似性や依拠性など、通常の著作権侵害と同様の考え方が関係すると指摘しています。また、生成AIに関係する事業者や利用者向けに、リスクを低減するためのチェックリストやガイダンスも公開しています。
特に、広報、広告、デザイン、動画制作、Web制作などの部門では、生成物をそのまま公開せず、類似する作品がないか、人の目で確認する工程が必要です。
生成AIは、質問に対して自然で説得力のある文章を作ります。しかし、その内容が常に正しいとは限りません。存在しない法律、判例、統計、企業名、人物の発言などを、もっともらしく出力することがあります。
このような現象は「ハルシネーション」と呼ばれます。
誤情報を顧客向けの資料やWebサイト、社内規程、契約書などに使用すれば、企業の信用低下や損害につながりかねません。特に法律、医療、金融、人事、採用など、判断の影響が大きい業務では、必ず一次情報や専門家による確認が必要です。
生成AIの回答には、学習データに含まれる偏りが反映される場合があります。
たとえば、採用候補者の評価、昇進や人事配置、顧客の選別などをAIの回答だけで決めると、性別、年齢、国籍、職歴などに関する偏った判断につながる可能性があります。
生成AIは判断を補助する道具として使い、最終的な意思決定と責任は人が持つことを明確にする必要があります。
自社の機密情報だけでなく、顧客や取引先から預かった資料にも注意が必要です。
顧客の企画書、契約書、原稿、調査資料、システム仕様書などを許可なく外部のAIサービスへ入力すれば、秘密保持契約や業務委託契約に違反する可能性があります。
「文章を要約するだけ」「資料の一部分だけ」という認識であっても、外部サービスへの情報提供に当たる場合があります。自社の判断だけではなく、顧客や取引先との契約内容を踏まえて利用することが必要です。
生成AIのリスクは、専門部署だけの問題ではありません。
営業担当者が、顧客名の入った提案書をAIに読み込ませて文章を修正する。人事担当者が、応募者の履歴書を入力して採用評価を作らせる。広報担当者が、AI生成画像を確認せず広告に使用する。開発担当者が、未公開のソースコードを入力して修正案を求める。このような行為は、日常業務の効率化として自然に起こり得ます。
社員が「何を入力してはいけないか」を具体的に理解していなければ、悪意がなくても問題は発生します。
そのため、社内ルールでは抽象的に「機密情報の入力を禁止する」と書くだけでなく、実際の業務に沿った具体例を示すことが重要です。
業務利用を認めるAIサービス、契約プラン、会社アカウントを指定します。
個人アカウントや無料版の利用をどこまで認めるのかも明確にし、利用サービスごとのデータ保存や学習利用の設定を確認します。
顧客情報、個人情報、未公開情報、契約書、認証情報、ソースコードなど、入力を禁止する情報を具体的に示します。
一方で、公開済み情報や一般的な文章作成など、利用可能な範囲も示すことで、社員が必要以上に萎縮せず活用できるようにします。
生成された文章や画像は、事実確認、著作権確認、表現確認を行ったうえで使用します。
特に顧客向け資料や外部公開物では、責任者の確認や社内承認を必須にするなど、業務の重要度に応じた確認体制が必要です。
AIの回答を使っても、最終的な責任は人や企業が負います。
「AIがそのように回答したから」という説明では、顧客や社会に対する責任を果たせません。利用者、確認者、承認者の役割を明確にしておくことが重要です。
誤って機密情報を入力した場合や、問題のある生成物を公開した場合に、誰へ報告するのかを定めます。
社員が処分を恐れて問題を隠すと、被害が拡大する可能性があります。早期報告を促すためにも、相談しやすい体制と対応手順が必要です。
生成AIのガイドラインを作成して社員へ配布しても、それだけで安全な利用が定着するとは限りません。
たとえば「個人情報を入力しない」と書かれていても、氏名を削除した会議録は入力できるのか、顧客番号だけなら問題ないのか、契約書の一部なら利用できるのかなど、実務では判断に迷う場面が多くあります。
そこで必要になるのが、具体的なケースを使った研修です。
実際の業務を想定し、「この情報は入力できるか」「この出力はそのまま公開できるか」「誰の確認が必要か」を考えることで、社員が自分で判断できるようになります。
生成AIを安全に活用するためには、ルールの整備と社員教育を一体で進めることが重要です。
研修では、生成AIの基本的な仕組みだけでなく、業務で起こり得る問題を具体的に扱う必要があります。
全社員向けには、入力してはいけない情報、誤情報の確認方法、著作権への配慮、問題発生時の報告方法などを中心にします。
管理職向けには、部下のAI利用をどのように管理するか、業務ごとのリスクをどのように判断するか、問題が起きた際にどう対応するかといった内容が必要です。
経営層には、AIガバナンス、企業としての説明責任、サービス選定、リスク管理体制など、より経営的な視点が求められます。
また、人事、広報、営業、システム開発など、部門ごとに扱う情報やリスクが異なるため、対象者に合わせて内容を変えることも大切です。
講師セレクトでは、生成AI、DX、情報セキュリティ、個人情報保護、著作権、コンプライアンスなど、幅広い分野の専門講師をご紹介しています。
講師セレクト自身も業務の中でAIを活用しており、AIを単に危険なものとして避けるのではなく、リスクを理解したうえで企業の成長や業務改善に役立てることが重要だと考えています。
実際に企業からは、「生成AIを導入したいが何から始めればよいか」「社員がすでに使っているがルールがない」「情報漏えいや著作権が心配」「管理職にAIリスクを理解させたい」といった相談が増えています。
講師セレクトでは、こうした企業ごとの状況を確認し、多数の登録講師の中から、目的や対象者に適した専門講師をご提案します。
たとえば、全社員向けの生成AIリテラシー研修、管理職向けのAIリスク管理研修、経営層向けのAIガバナンス研修、広報・制作担当者向けの生成AIと著作権研修など、対象者に合わせた内容の設計が可能です。
一般的な知識を一方的に説明するだけでなく、企業の業種や実際の業務、利用中のAIサービス、社内ガイドラインに合わせたケーススタディやグループワークを取り入れることもできます。
AI活用を進めたい企業だからこそ、早い段階でリスクを明確にし、安心して使える環境をつくることが重要です。講師選びだけでなく、どのような研修を実施すべきか分からない場合も、企業の課題や目的に合わせてご相談いただけます。
生成AIは、業務効率化や新しい価値の創出に大きく役立つ一方、使い方を誤ると、情報漏えい、個人情報保護、著作権、誤情報、差別や偏見、契約違反などのコンプライアンス問題につながります。
重要なのは、AIを利用しないことではありません。
どのサービスを使うのか、どの情報を入力できるのか、出力をどのように確認するのか、最終判断を誰が行うのかを明確にし、社員が安心して活用できる環境を整えることです。
講師セレクトでは、自らもAIを活用しながら、企業がリスクを理解したうえで早期にルールと教育体制を整えることが、これからの成長につながると考えています。
生成AIの社内活用、コンプライアンス対策、社内ガイドラインの周知、社員研修を検討している企業は、課題に合った専門講師の選定から研修内容の設計まで、講師セレクトへご相談ください。