山﨑 朗
中央大学経済学部 教授
講師カテゴリー
- 政治・経済
- 経済
- 地方創生・地域活性
- 経営・ビジネス
- マーケティング・イノベーション・ブランディング
- グローバル戦略
- ものづくり・製造業
出身地・ゆかりの地
北海道 愛知県 滋賀県 京都府 福岡県 佐賀県 沖縄県 カナダ
プロフィール
1981年 京都大学工学部卒業
1986年 九州大学大学院経済学研究科博士課程修了
九州大学経済学部助手、フェリス女学院大学講師、滋賀大学経済学部講師、九州大学経済学部教授を経て
2005年 中央大学経済学部教授
講演テーマ
【地域創生のデザイン】
人口減少、少子高齢化、人口の都心回帰という潮流のなかで、地域を創生させるための戦略的デザインとは、都市のコンパクト化、情報化社会への対応、クリエイティブ産業の創出、地域のグローバリゼーション、そしてプレミアムな産業、サービス、地域の創生にある。そのためには、空港のさらなる活用、LCCの誘致、空き家や古民家のリノベーション、コンバージョンが重要となる。新しい社会的価値に対応した地域へのリ・デザインが求められている(『日本経済新聞』のやさしい経済学に「地域創生の新しいデザイン」①~⑧,2017年6月として掲載)。
【クリエイティブ地方創生】
工場誘致、公共事業、6次産業化、ゆるキャラ、ブランド米の開発といったこれまでの手法では、地方創生を実現することは難しい。地方の県の失業率は全国平均並みとなり、有効求人倍率は首都圏を上回る県も増えてきたにもかかわらず、地方の県から首都圏への人口流流出は加速している。地方に不足してるのは、「雇用の量」ではなく、「雇用の質」や夢・希望・やりがい・自己決定である。地方における豊かな出新しい仕事と暮らしを実現するには、クリエイティブな仕事や街づくりが重要である。
【プレミアム地方創生】
土地が安い、水が安い、人件費が安い。これらの3安で企業を誘致するという時代は終わった。これらの生産要素が安いだけなら、中国や東南アジアで十分である。地方は世界中で増加している富裕層を対象とした、地域固有の、テロワールを活用したプレミアムな地域創生にチャレンジじなければならない。すでに、JR九州のななつ星や、鹿児島県霧島温泉の「天空の森」や各地のクラフトビール、日本ワインなどで、プレミアムな地域創生の動きが始まっている。
【日本のイノベーションの課題とは何か】
日本の1人当たりGDPは今や世界30位にまで低下した。日本の生産性を高めることが重要だという指摘は多い。日本の生産性が高まらない理由の一つは、産業構造高度化のいきづまりにある。日本産業は戦後、鉄鋼、石油化学、家電、自動車、半導体、コンピュータなどの新しい高度な製品へとシフトすることに成功してきた。
しかし、航空宇宙産業、ICT産業、医療機器産業、医薬品産業においては世界的なポジションを確立できていない。日本には多様な技術、産業が蓄積されており、それらの要素の組み合わせによって、新しい医療ロボットの開発は可能である。また、化学産業や食品産業の知識を医薬品への延長していくことで、日本独自のイノベーションシステムの確立が可能となろう(詳細は、山﨑朗編著『地域産業のイノベーションシステム』学芸出版社、2019年)
【高度国防国家の構想】
国土計画の考えは、ナチスドイツによる戦時体制における国土構造の構築から始まった。工業地帯や大都市への集中を抑制し、分散された拠点を高速交通で結合するという方向性が打ち出された。戦前の日本の国土計画の構想案でも首都移転や工業地帯の分散の構想が示されたが、実現する強力な手段を欠いていた。
そして今、新しい高度国防国家の構想が求められる時代となった。港湾、空港、鉄道、高速道路、地下鉄は国防という観点からの再整備が必要となった。エネルギーと農林水産物・食品を極端に海外に依存する国際分業体制は、経済学における分業の利益をもたらすが、高度国防国家の構築にとっては望ましくない。エネルギー、食糧の自給率の向上は、軍備の増強以上に重要な課題であり、自然エネルギーの活用や農林水産業の再構築は、地方創生に資することとなる。
【低速化する社会への対応】
経済発展は、蒸気機関、内燃機関、ジェットエンジン、通信(インターネットを含む)の発明、社会的活用によってもたらされてきた。空間の存在と空間克服が経済発展の基盤である。低速から高速へ、そして光速へと展開してきた空間克服技術は、人口密度の低下と高齢化の進展によって低速化への対応を求められるようになった。人口密度の低下は、鉄道、バス路線、新幹線、航路の維持を困難化し、空間移動のコストを高め、空間移動の機会を減少させる。高齢化による徒歩移動の困難化は、徒歩移動の距離を半径500m程度に限定し、サービス機能へのアクセスの制約条件となる。
人口密度の低下、高齢化、サービス経済化の進展は、高速交通や高速通信のさらなる活用ではなく、人口密度の維持(コンパクトシティの形成、郊外開発の抑制)、高齢者の都心居住、無人運転者の開発など、新しいモビリティの在り方が求められている。
【モビリティと経済発展】
日本経済が苦しんでいる。成長率は鈍化し、OECD諸国のなかでは一人当たりGDP、所得水準で下位に位置づけられるようなった。経済発展は、空間克服の歴史である。空間は、移動にとっての障壁であり、移動には移動時間と移動費用そしてリスクが発生する。安全に、かつ低コストでさらに高速で移動できるシステムを構築することが経済発展につながり、ビジネススタイルや物流の変革をもたらす。
日本は、自転車、蒸気機関、機関車、造船、自転車、二輪車、自動車、電話、携帯電話、モバイルパソコンにおいては、世界的生産国となったが、2000年以降、そして近年新しいモバイル機器の製造において競争劣位に陥った。EV、航空機、ロケット、ドローン、スマートフォン、モバイルパソコンである。
また、日本は海外と交通系社会資本と結合しておらず、災害や山岳地帯の多さから社会資本整備コストが高く、移動コストが高いという問題を抱えている。港湾においては、京浜港、阪神港ともに世界ランキングでは上位20位圏外となり、北米、欧州航路の抜港という危機に瀕している。
金融緩和では日本経済の再生は実現しない。未来を見据えたモビリティ産業の育成こそが日本経済再生のカギである。
実績
「2050年の地域創生をデザインする-未来を読み解く4つの視点から-」国土の長期展望に関する勉強会(国土交通省)(2017年)
「地域創生のプレミアム(付加価値)戦略」九州経済調査協会(2018年)
「プレミアム地域創生」地方空港活用研究発表フォーラム(中標津)(2018年)
「地域創生を推進するために圏域に求められる機能」第4回圏域研究会(2018年)
「プレミアム沖縄観光戦略」琉球銀行・九州経済調査協会70周年記念シンポジウム基調講演・パネラー(2019年)
「地域創生の課題と戦略」東京大学三井不動産寄付講座講演(2019年7月23日予定)
講演の特徴
・工学部と経済学部という二つの異なる領域の知識をもとにしたユニークな視点の提示
・文部科学省、経済産業省、国土交通省などの省庁および地方自治体、各種団体の委員、委員長を150近く経験と知見をもと
にした具体的な政策提言
・北海道から沖縄県まで多様な地域での活動歴があり、多様な地域の実情にも精通
・日本経済新聞のやさしい経済学などにもコラムを執筆しており、それらの参考記事等を活用した一般の人にもわかりやすい講
演内容
著書
『地域産業のイノベーションシステム』編著(学芸出版社 2019)
『東京飛ばしの地方創生』共著(時事通信社 2017)
『地域政策』共著(中央経済社 2016)
『インバウンド地方創生』共著(ディスカバー・トウェンティワン 2015)
『地域創生のデザイン』編著(中央経済社 2015)
『日本の産業クラスター戦略』共著(有斐閣 2003)
『クラスター戦略』編著(有斐閣 2002)
『IT革命とモバイルの経済学』共編(東洋経済新報社 2000)
『日本の国土計画と地域開発』(東洋経済新報社 1998)
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