財部 剛

財部 剛
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財部 剛 (たからべ たけし)

BE THE CHANGE 合同会社 代表
エグゼクティブコーチ・コンサルタント
元 東京海上日動専務、同監査役

講師カテゴリー

  • 経営・ビジネス
  • 経営論・組織論・経営哲学
  • リーダーシップ・マネジメント
  • 人事・採用
  • ダイバーシティ
  • 働き方改革・ワークライフバランス
  • CS・ES
  • コンプライアンス・CSR
  • 事業承継・M&A
  • ビジネス研修
  • リーダーシップ・マネジメント
  • コミュニケーション・世代間ギャップ
  • コーチング
  • ロジカルシンキング
  • 問題解決
  • 営業・接客・販売
  • ハラスメント
  • モチベーション
  • 夢・希望・挑戦
  • 意識改革・気づき
  • 人権・福祉・介護
  • 男女共同参画
  • LGBTQ

出身地・ゆかりの地

青森県 岩手県 宮城県 秋田県 山形県 福島県 東京都 神奈川県

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プロフィール

1980年、上智大学経済学部を卒業。(現)東京海上日動に入社、人事と企業営業を柱にキャリアを重ね、常務・専務時代の6年間は人材育成とクライアント支援・社会課題の解決に、監査役としての4年間は「良い会社をつくること」と「リスクを管理すること」この二つに全力を尽くした。企業、銀行、自治体などで「これからの会社経営」、「人的資本の活用・キャリアマネジメント」「東京海上の海外戦略・M&A戦略」「リスクマネジメント」、「内部統制」などのテーマで講演会、勉強会を多数開催。現在はエグゼクティブコーチング&コンサルティング会社である「BE THE CHANGE」双子の兄であるジャーナリスト財部誠一と共に起業。

講演テーマ

【考える力と諦めない人間力】

「考える」能力は「頭の良さ」と同じではない。
私たちは一般的に、学校の成績が優秀であったり、試験で高得点を挙げる人を「頭が良い」と言うが、こうした能力はたしかに「頭の良さ」の1つの側面ではあるが、それは実社会で求められる能力のごく一部に過ぎない。
今まで誰も解けなかった問題を解決する。市場にこれまで存在しなかった画期的な商品を思いつく。想定外の出来事が起こったときに、的確な対応策を考え出す。このような新しいアイデアを思いつくためには、「考える力」が不可欠である。この能力は試験問題を解かせるだけでは測ることはできない。別種の力だからである。
今日話す「考える力」はまさに、このような能力である。
歴史上、最も偉大な天才と呼ばれる物理学者アインシュタイン博士は、こんな発言をしている。「私はすごく頭か良いわけではなく、ただ、人よりも長い時間、問題と向き合っているだけだ」「私に特別な才能などない。ただ、情熱的と言えるほどに好奇心が旺盛なのだ」
アインシュタインは自ら「頭が良いわけではない」と言っている。信じられますか? この言葉は決して謙遜ではなく、彼の本心だと得心することから、深い教訓が得られる。

「考える力」とは何か
⚫︎「考える」能力は「頭の良さ」と同じではない
⚫︎「考える」という行為は、外部からは進み具合や成果が見えづらい
⚫︎試験ですぐに成果が見える「マニュアルカ」
⚫︎社会のなかで「マニュアルカ」が活かせる場面は限られている
⚫︎今必要なのは、「自ら考え、創造する力」
⚫︎「自ら考え、創造する力」は3つの要素からなる
⚫︎きちんと「考える」ことで、潜在的な問題意識を引き出せ
⚫︎「問題を見つける力」を身につける
⚫︎まず、「問題を見つける力」を養おう
⚫︎何気なく考えていることの中から、問題の種を見つけ出す
⚫︎「そのうち考えよう」を「今、もう少し考えよう」に変える
⚫︎「分からない」を分類して「何が分からない」かを明確にする
⚫︎分からないこと、ひらめいたことはメモをとる
〈情報収集術①〉答えを探さない
〈情報収集術②〉インターネットでは事実とノウハウを峻別しよう
〈情報収集術③〉理解した情報を捨てる
〈情報収集術④〉情報は理解できるまで集中して読み込む
⚫︎メモするときのポイントは自分の言葉で書くこと
⚫︎メモは肌身離さず持ち歩き、不要になったら捨てる
⚫︎「問題を見つける」極意は、集め、理解し、捨てること
⚫︎流行りのテーマは捨てたほうがいい
⚫︎問題の核心を浮かび上がらせる「メソッド」を活用する

創造的な問題を解く方法は、自ら編み出すしかない
⚫︎複雑な問題を「類型化」して、まずシンプルにする
⚫︎「解く力」の基礎として、マニュアルカを活用する
⚫︎「類型化を多角的に行う」のが答えの見えない問題を解くコツ
⚫︎あえて回り道をする「キュリオシティ・ドリヴン」の方法
⚫︎「分かってるつもり」と「知ってるつもり」は落とし穴

「諦めない人間力」を身につける
⚫︎諦めず最後まで考え続ける
⚫︎すぐに認められる成果を出そうとしない
⚫︎スタート地点に引き返す勇気を持つ
⚫︎疑問を大切にすることで、セレンデイピティを高める
⚫︎成果の出ない時間を無駄と考えてはいけない
⚫︎天才的なひらめきを手にするのは、成果に鈍感なタイプ
⚫︎正解にたどり着けるのは「トライ・アンド・エラー」を100回繰り返せる人だけ

考えることは、創造すること
⚫︎マニュアルの時代から創造する時代へ
⚫︎マニュアルカのかなたの創造カ
⚫︎ 「知識」を捨て、「知恵」を獲得する
⚫︎情報を創造の素材に変える「捨てる」テクニック
⚫︎成功体験も捨てる
⚫︎長距離型思考の筋肉を身につける
⚫︎答えの出ない苦しさを感じたら、ひらめきはすぐそこにきている
⚫︎子どもの「どうして?」に答えることで「考える力」を育てよう
⚫︎大人の「どうして?」を大切にする
⚫︎失敗から得られるものと恐れない勇気

情報を分析し、知恵を得する
●インテリジェンス、訳せば霍峻的情報
●大切なのは個別の知識ではなく、様々な知識を結びつける「考える力
●メモに取った情報は、互いに結びついくる
●創造的な思考を妨げる成功体験


知識を知恵に、インフォメーションをインテリジェンスへと進化させる思考回路がひとたび形成されると、自由自在の発想ができるようになり、思考がますます柔軟になっていく。

「マニュアル力」を基礎として「考える力」を養い、むずから課題を見つけてそれを「諦めない人間力」で解決へとつなげる地道な作業を積み重ねることによって、長距離ランナー型の強靭な思考力をが身についてくる。

答えの出ない苦しさを感じたら、ひらめきはすぐそこに来ている。考え続けるということは、言い換えれば「ひらめき」を待つということでもある。画期的ひらめきは問題意識が煮詰まったときに訪れるものである。一生懸命努力を重ねて行き詰まったとき、ピンチのときにこそ、ひらめきは近い。危機的状況を「諦めない人間力」で打開できれば、イノベーションは間近である。

自分の頭で考え、そのうえで失敗体験を積むことは、大いなる前進である。取り組んでいる課題の難しさ、解決の障壁となるポイントを具体的に理解できるようになる。これは多種多様なエラーを繰り返すことでしか得られない実践的な理解である。

成功体験だけでは思考力はむしろ鈍ってくることが多い。失敗し痛い思いやつらい経験を積むことで、物事を深く洞察できるようになり、セレンディピティは高まっていく。セレンディピティは洞察力の高い人に訪れるものである。

私たち人間はみな考え、何度も躓きながら施策を深め、この社会を築いてきた。人類が経験した膨大な試行錯誤のうえに、私たちは生かされていると言っても過言でない。新たな時代を築くために、失敗を恐れず、様々な状況変化に対応できる「考える力」を鍛え、それを支える「諦めない人間力」を身につけるよう、みなさまが日々努力することを期待する。

【困難の分割で解決策は見えてくる】

(1)仕事の困難を一人で背負わない

責任感が強く、自分の仕事に熱心な人ほど陥りやすいつまずきというものが
あります。それは「問題を一人で抱え込んでしまう」ということです。
仕事に自信があり、大きな成果を出せるようになり、自分がこの会社を担っていこうと力が入ってしまうと、「助けて欲しい」と言えなくなったり、「引き受けたからには弱音を吐けない」と気負ってしまうことがあります。

謙虚になって、社内や周囲を見渡せば、いろいろな能力をもった先輩、同僚、たくさんの部下に囲まれていることを、気づかなかった経験を皆さんもお持ちではではないでしょうか?

リーダーとしての自信は本当に大切なものですが、その自信が逆にプライドと
なって人にものを聞けなくなると、仕事は狭くなり、判断が柔軟でなくなる
ものです。特に若い人の意見が聞けなくなりますので、心に留め置いて下さい。

(2)困難の分割で解決策は見えてくる

問題を分割して考えてみると、この問題なら彼が専門家だから頼める。
別の問題ならあの人に相談できるとゆだねていくことができるはずです。
悩みを打ち明ければ、部下も同僚も、次々と知恵を結集してくれます。

デカルトは「方法序説」の中で「困難は分割せよ」と説いていますが、まさにその通りだと思います。ある方がこれを「困難の因数分解」と呼んでいますが、仲間と困難を共有することで、「感動」や「情熱」も共有できるはずです。
「一時の恥を突破する勇気」これも、経営者には欠かせない資質ではないでしょうか。

私はたくさんの経営者にお目にかかりますが、その方々はみなさん質問上手です。素朴に「なぜ」「どうして」とどこまでも聞いてこられる方もいらっしゃいます。私が四苦八苦して、分かりやすく説明しているうちに、逆に大きなヒントを私自身が手にしていることも少くありません。

すなわち仕事の要諦は、「予断を持たず人と向き合い、困難を一人で背負わないこと」、そして「聞き上手になること」ではないでしょうか。

(3)初めに心を動かし、頭は2番目に動かす

現場でお客様の要望を感じ取る力は、あらゆる仕事で求められます。この力を是非とも磨いて欲しいと思います。

リーダーが最初にすべきことは、ただひたすら聞き役に徹すること。壁を作らず、自分の意見や提案を押し付けず、とにかく率直な声を拾い続けることが大事だと思います。

社内の会議で問題を論じる場合も同じです。ひとつ意見が出るたびに賛成したり反対したりするのではなく、素材を徹底して聞き尽くす。熱心に丁寧に心を用いて聴くことが重要です。

言いたいことを言い尽くして初めて、人間は次のステップに進めます。
出尽くした意見、不満、要望を解決すべく、私たちは自身の経験と知識と技術を総動員することになります。心で聴き、頭で策を練る。仕事は自分自身のためにやっているのではなく、社会や相手のためであるという目線を持てば、必ず納得できる解決策が生まれるはずです。

(4)古い殻を打ち破る

日々の努力を積み重ねながら少しずつ進化していくのは大切なことですが、
私は目標をできるだけ高いところに置いて、みんなで一緒に大きくジャンプ
することも必要ではないかと考えています。

ダーウィンの進化論では、自然淘汰によって環境に適応できるものが生き残ったと考えられていなすが、私は、日本で動物の研究を続けられ、独自の進化論を構築した生物学者の今西錦司さんの「大進化論」に傾倒しています。これはヒトが四つ足動物から、直立の二足歩行へ変わるような目覚ましい進化のこと。

一つの群れの中で、ある一匹ができるようになった行動を、いつの間にかすべての仲間ができるようになってしまう、という劇的な変化のことです。

私たちも、絶えず、仕事を変革したい、進化したいと願っていますが、激動の時代は、より強くそれを求めていると思います。そういう時に高いハードルを掲げ、全員に共有・見える化しておくと、一人ひとりがそのハードルを飛び越えようと助走を始めるのでないでしょうか。
そして誰かがポーンとクリアすると次々と続いていくようになると思います。

(5)人と組織について学んだこと

厳しい仕事を続けていく上で大切になるのは、心も体も機嫌の良い状態を保つことと、前向きな自分を信じることではないかと思います。

人間には必ず元気の連鎖が起こります。
進化は、個ではなく群れで、個人ではなく組織で起こります。

皆さまにおかれては、これからも、仕事の元気を通して、グループの大進化を遂げていただきたいと思います。

最後に、みなさんと共有したい【私が大切にしている名言・キーワード】ご紹介して、私の話を終わらせていただきます。

1.『 規矩作法 守りつくして 破るとも 離るるとても 本を忘るな 』
   道を究める段階を三つに表した『守破離』という言葉です。

もともとは、江戸時代に川上不白が著した『不白筆記』で、茶道の修行段階の教えとして紹介されました。以後、宮本武蔵の五輪書など、諸武芸の修行段階の説明にも使われています。

「守」とは、師匠の教えを正確かつ忠実に守り、物事の基本の作法・礼法・技法を身につける「学び」の段階。
「破」とは、身につけた技や形をさらに洗練させ、自己の個性を創造する段階。
「離」とは、「守破」を前進させ、新しい独自の道を確立する段階。

師匠や諸先輩から第一段階の「守」をいかに身につけるかで、「破・離」へと続く、その後の自己成長の「土台」の大きさが決まります。助言を喜んで受け入れていくことで、将来「離」に到達した時に、自らをより一層高めていくことができます。

思い通りにならない時こそ、それまで培ってきた「土台」が助けてくれます。
経営者として、自らを鍛え、進化させていく道に終わりはありません。


2.『 至誠にして動かざるものは未だこれあらざるなり 』 (吉田松陰)
「孟子」の一節。誠を尽くして動かないものはない。


3.『 巧詐は拙誠に如かず 』 (韓非子)
巧みに偽り、人を欺こうとするよりも、拙くとも誠意を示すほうが相手の心に響く。

「インテグリティ(integrity)」 誠実、真摯、高潔などの概念を意味する言葉。組織のリーダーやマネジメントに求められる最も重要な資質、価値観を示す表現として、特に欧米の企業社会でよく使われます。企業のインテグリティ(誠実さ)を最優先し、法令順守だけでなく、より幅広い社会的責任の遂行と企業倫理の実践を目指す広義のコンプライアンス経営を、インテグリティ・マネジメントと呼びます。

4.『 夢なき者は理想なし。理想なき者は信念なし。信念なき者は計画なし。計画なき者は実行なし。実行なき者は成果なし。成果なき者は幸福なし。
ゆえに幸福を求めるは夢なかるべからず 』 (渋沢栄一)

『 できるだけ多くの人に、できるだけ多くの幸福を与えるように行動するのが、我々の義務である 』 (渋沢栄一)


5.『 勝ちに不思議な勝ちあり、負けに不思議な負けなし 』  (松浦静山)


6.『 震災時のBCP 生き残った会社がすべてを総取り 』

                                以上

【報徳思想とこれからのリーダーシップ】

報徳思想を自社の社是、フィロソフィとして経営をされている、〇〇グループさんの講演会に、お招きをいただき、大変光栄に思っております。
釈迦に説法ではありますが、報徳思想は江戸時代後期に、二宮尊徳が生み出した思想ですが、我々が生きるこの時代においても、人としての生き方あるいは企業経営の在り方について、明確な指針・大切な気づきを、私たちに示唆してくれています。

報徳思想は、決して近道を行こうとせず、地道に誠実に、徳を積み上げていくことで、自らが、望む方向に進んでいくことができる、ということを教えてくれています。

それでは、報徳思想を学ぶ意義、またはそれを実践していく意味は何でしょうか。
私の理解しているところを申し上げますと、以下の5つに整理できると思います。

• まずは、至誠(誠実さ)、を、貫くことの意味が、理解できるようになる
• 二つ目は、人生において、大切なことが、分かるようになる
• 三つめは、「何のために働くのか」、仕事の意義、社会貢献の意味を、
理解できるようになる
• 四つ目は、仕事に対する、モチベーションが上がる
• そして、五つ目が、進むべき道に迷ったときに、正しい選択が、できるようになる

私は、このように思っておりますが、本日は、伊田グループの役員の皆さまと共に、「報徳思想」にもとづく経営とは、どういうものか、改めて考えてみたいと思います。

二宮尊徳の思想や、方法論を「報徳」と呼びます。
これは、「万物にはすべて良い点(徳)があり、それを活用する(報いる)」という、二宮尊徳の思想に対して、相模の国・小田原藩主・大久保忠真が、
「汝のやり方は、論語にある、以徳報徳である」、との言葉を述べたことによる、と言われています。 (遺徳報徳=徳をもって徳に報いる)
これら「報徳思想」や、「報徳仕法」は、尊徳の子孫や弟子たちに受け継がれ、時代を超えて、今に至っています。

渋沢栄一、安田善次郎、鈴木藤三郎、御木本幸吉、豊田佐吉といった明治の財界人・実業家や、松下幸之助、土光敏夫、稲盛和夫といった、昭和を代表する経営者たちにも多大な影響を与えたといわれています。

このように、報徳思想に、影響を受け、自らの人生において、その教えを実践し、歴史に名をとどめた人物は、数多くいらっしゃいますが、本日はその中で、私が敬愛し、大いに学びを得て、これまでの人生や会社経営の中で、影響を受けた3人の名伯楽について話をさせていただきたいと思います。

併せて、先が見えないこの時代にあって、いかに良い会社をつくり、サステナブルに成長し続けるか、これからの会社経営、役員のリーダーシップとは、どうあるべきか、皆様の参考になる話ができれば嬉しい限りです。

それでは、報徳の思想を自らの生き方の中で体現し、世の為人の為に尽くし、日本というこの国を、それぞれの時代において、牽引してこられた、3人の偉大な実業家の生きざまについて、話したいと思います。

一人目は、
•明治から大正にかけて活躍した実業家であり、「近代日本経済の父」、あるいは「日本資本主義の父」とも言われている 渋沢栄一さん です。
•そして二人目は、一代で「松下電機産業、現在のパナソニック」を築き上げた希代の名経営者、「経営の神様」と言われた 松下幸之助 さんです。
•そして三人目は、8月24日に90歳で永眠された 稲盛和夫 さんです。
 
それでは、一人目の渋沢栄一さんについて、お話したいと思います。
渋沢栄一さんは、明治・大正期の実業家、財界の指導者として、近代日本の礎をつくられた方で、多種多様な企業の設立や運営に関わったと言われています。かくいう私の出身会社である東京海上も、渋沢翁が設立した会社のひとつであります。

渋沢栄一は、大正5年(1916年)に、『論語と算盤』を著し、「道徳経済合一説」という理念を打ち出しました。幼少期に学んだ『論語』を拠り所に倫理と、利益(=算盤)の、両立を掲げ、経済を発展させ、利益を独占するのではなく、国全体を豊かにする為に、富は全体で共有するものとして、社会に還元することを説くと同時に、自らもそれを体現していました。

『論語と算盤』には、その理念が端的に次のように述べられています。

富をなす根源は何かと言えば、仁義道徳。正しい道理の富でなければ、その富は完全に永続することはできない。 

そして、道徳と離れた欺瞞、不道徳、権謀術数的な商才は、真の商才ではない、とも言っています。

また、『論語と算盤』の次の言葉には、渋沢栄一の経営哲学のエッセンスが込められています。

「事柄に対し、如何にせば、道理にかなうか」をまず考え、しかして、その道理にかなったやり方をすれば、国家社会の利益となるかを考え、さらに、かくすれば自己のためにもなるかと考える。そう考えてみたとき、もしそれが、自己のためにはならぬが、道理にもかない、国家社会をも利益するということなら、余は断然自己を捨てて、道理のあるところに従うつもりである。

まさに報徳の思想の神髄に通じた渋沢ならではの言葉ではないでしょうか。

次にご紹介する人物は、松下幸之助さんです。松下電器産業(現在のパナソニック)を設立した人物で、「経営の神様」としてもおなじみですが、幸之助さんは、社員を大切にして家族のような愛情や親しみを持って接しなければならない、という理念を提唱していました。まさに報徳思想を体現した経営者の代表ですが、幸之助さんは、「報徳博物館」の設立にも関わった人物としても知られています。

それでは、ここで、松下幸之助さんの生い立ちを振り返ることで、「報徳とは何か」について、改めて皆さまに顧みていただければと、思います。

<松下幸之助の生い立ち・生き様>

松下幸之助は、明治27年11月27日、現在の和歌山市禰宜(ねぎ)、JR和歌山線の千旦(せんだ)という無人駅から歩いて5分くらいのところで生まれています。

松下家は小地主の階級で、かなりの資産家でした。8人兄弟の三男末子だった幸之助は両親に特にかわいがられて育ちましたが、そんな幸せな暮らしも長くは続かず、幸之助が4歳のとき、父親が米相場で失敗。先祖伝来の土地と家を人手に渡して一家は和歌山市に移住し、父は単身大阪に働きに出ました。そして、その父から、「大阪八幡筋の火鉢店で小僧が要るとのことだ。幸之助を寄こしてほしい」という手紙が届き、幸之助は単身、大阪に丁稚奉公に出ます。尋常小学校4年の秋、9歳のときのことでした。

幸之助が最初に奉公したのは、大阪・島之内の「宮田火鉢店」でした。ここでの仕事は子守りや掃除が中心で、その合間に火鉢を磨いていたといいます。しかしこの火鉢店は幸之助が入って3カ月ほどで店を閉めることになったため、船場堺筋淡路町の「五代自転車商会」に移ります。幸之助は、新しい奉公先で頭の下げ方、言葉遣い、身だしなみや行儀など、社会人として、また商人としてのイロハをみっちり仕込まれました。後年、当時のことを「船場大学」「船場学校」として、懐かしく振り返っています。

幸之助が奉公を始めて5年ほどたったころ、大阪市では全市に電気鉄道の線路が敷設されました。幸之助は使いの途中にしばしば電車を見て、「これからは電気の時代だ」と新時代の到来を予感。奉公先を後にし、明治43年10月、「大阪電灯株式会社」の内線係見習工として採用されます。

幸之助の工事の腕は人並み以上で昇給も昇格も早く、大正6年4月、「検査員」に最年少で昇格しました。検査員はあこがれの地位ではありましたが、幸之助には次第にその仕事が物足りなく感じられ、また、肺尖カタル(肺上部の先端部の結核症。肺結核の初期病変)にかかり、医者からは養生を勧められて健康に不安を抱くようになります。

そうしたことから、不安定な日給生活より、いっそ妻と2人で何か商売でも始めようかと考えた幸之助は、以前考案していたソケットを何とかものにしたいという思いを抑えがたくなり、独立を決意。大正6年6月、22歳のとき、辞表を提出し、大阪電灯を退職します。そして翌7年3月、松下電気器具製作所(現パナソニック)を創業して電気器具の製造販売に邁進していきました。

幸之助は22歳のときに、それまで勤めていた電灯会社を辞めて事業家としての人生を歩み始めましたが、そのときの状態は、財産もない、学歴もない、健康にも恵まれない、そして両親も兄弟姉妹も大半が既に他界していたということで、文字どおり「ないない尽くし」からの出発でした。ところが幸之助は、こうした状況を、そのままマイナスの要因にはしませんでした。

また、幸之助は、晩年、次のように述べています。

1.生来からだが弱かったがために、人に頼んで仕事をしてもらうことを覚えた
2.学歴がなかったので、常に人の教えを請うことができた
3.財産がなかったので丁稚奉公に出されたが、そのおかげで幼いうちから商人としての躾を受け、世の辛酸を多少なりとも味わうことができた
4.お金がないから一歩一歩着実に計画を立て、資金のダム、信用のダム、設備のダムといった小さなダムを社内にいくつもつくり、銀行が与えてくれる信用の範囲内で融資を受けて、事業をやってきた。そのおかげで不況でも好況でも一貫して自己のペースで活動することができた

「何もなかったから、かえって成功した」というわけです。「ないない尽くしからの成功」と幸之助が言われるのは、このようなことからでした。

また、幸之助は、みずからが60年以上にわたって事業経営に携わってきた経験を通じて得た信念として、経営においていちばん大切なのは、「経営理念を確立すること」であると述べています。そのうえで、本来あるべき正しい経営の進め方として次のような姿を求め、実践に努めていました。 それは、
1.衆知を集めた全員経営:1人でも多くの知恵を集めて、それを生かす経営
2.ガラス張り経営:経営の実態について秘密をもたず、ありのままを知らせる経営
3.ダム経営:人・モノ・カネ等のあらゆる面で一定の余裕を確保する経営
4.適正経営:自社の総合的な実力を正確に把握し、その力の範囲内で進める経営
5.自主責任経営:社員1人ひとりがそれぞれの責任を自覚し自主的に仕事に取り組む経営
6.雨が降れば傘をさす経営:当たり前のことを適時適切に実行する経営
7.日に新たな経営:常に生成発展を目指す経営
8.共存共栄の経営:自社の発展だけでなく、共々に栄えることを目指す経営
9.適材適所の経営:各自の持ち味が最大限生かされる配置を考える経営

これらは、経営の神様が、目指し実践した「報徳」の姿そのものであったと思います。

第2次世界大戦に敗れた直後の日本は、文字どおり危機に瀕していました。食べるものも住むところも、また仕事も極度に不足し、人々の道義道徳も乱れていたのです。加えて当時の法律や制度には不備が多く、ヤミでボロ儲けをする人があるかたわら、まじめに働く人ほど窮乏していくというのが現実の姿でした。
そうした世相の中で幸之助は、“どこかが間違っている。人間は本来、もっと平和で豊かで幸せな生活を送れるはずだ”という思いを強め、その思いを多くの人々に訴えたいと考えました。そして、「Peace and Happiness through Prosperity=繁栄によって平和と幸福を」というスローガンのもとに、衆知を集めて研究し、実践運動を展開する機関として、昭和21年11月3日、PHP研究所を創設しました。翌年4月には月刊誌『PHP』を創刊、幸之助はみずから各地に出向き、研究会や勉強会を開いてPHPの趣旨を訴えかけました。

幸之助は、昭和21年にPHP研究所を創設以来、「社会がよくならなければ人々の幸せもありえない」という思いから、政治や社会に対してさまざまな提言を行いました。特に昭和36年に松下電器の社長を退いたのを機、PHP研究を本格的に再開してからは、提言の書を数多く出版してきました。

さらに幸之助は、社会をよくするためには、為政者をはじめ各界の指導者に人を得ることが必要だと考え、次代を担う人材を育てる機関の設立を決意し、みずから私財70億円を投じて、昭和54年6月、神奈川県茅ヶ崎市に「松下政経塾」を設立しました。

そこでの研修の基本的な考え方は「自修自得」、すなわち、他から与えられるのを待って学ぶのではなく、自分で発意して研修、研究し、みずから理解、体得するというものでした。幸之助は第一期生の入塾式で、この自修自得によって、「かりに卒塾して、すぐに文部大臣なら文部大臣をやれと言われても、それをやれるというくらいの見識を、養わなければいけない」と述べています。

また、幸之助はPHP活動の中で、「素直な心になりましょう。素直な心はあなたを強く正しく聡明にいたします」というスローガンを掲げて、素直な心の大切さを人々に訴えるとともに、みずからもその涵養に努めていました。

一般に“素直な心”というと、おとなしく従順で、何でも人の言うことをよく聞くことだと解釈されます。しかし、幸之助のいう“素直な心”は、もっと力強く積極的なものでした。それは、私心なく、くもりのない心、自分の利害や感情、知識や先入観にとらわれず、物事をありのままに見ようとする心です。

心にとらわれがあると、物事の実相を正しくとらえることができず、判断を間違え、行動を過つことになります。一方、素直な心があれば、物事をありのままに見ることができ、物事の実相がつかめますで、正しい判断と行動が可能になります。また、どんな情勢の変化にも柔軟に、融通無碍(むげ)に順応同化し、日に新たな活動も生み出しやすい、ということになります。だからこそ、幸之助は、素直な心を養い、高めることを説き続けたのではないでしょうか。


そして、報徳思想の体現者として、最後にご紹介する人物が、稲盛和夫さんです。たぐいまれな経営手腕と哲学を通じて、産業界のみならず、広く市井の人にまで感化を与えた日本を代表する経営者であった稲盛和夫さんですが、8月24日に京都の自宅で、老衰のため永眠されました、享年90歳でありました。

稲盛さんは京セラやKDDIを創業し、それぞれ1.5兆円、4.9兆円を超える大企業に育成し、倒産したJALの会長に就任すると、僅か2年8か月で再上場へと導きました。 功績はそれだけに留まらず、中小企業経営者の勉強会「盛和塾」の塾長を務めた他、日本発の国際賞「京都賞」を創設し、人類社会に多大な貢献をもたらした人物の顕彰にも尽力されました。

その多岐にわたる活動に通底していたもの、それは「利他の心」でした。
その稲盛さんが、平成4年(1992)年に「致知出版社」で語られた話を、ここで、ご紹介させて頂きます。

 昨今、日本企業の行動が世界に及ぼす影響というものが、従来とちがって格段に大きくなってきました。日本の経営者の責任が、今日では地球大に大きくなっているのです。

 このような環境のなかで正しい判断をしていくには、経営者自身が心を磨き、精神を高めるよう努力する以外に道はありません。人生の成功不成功のみならず、経営の成功不成功を決めるものも人の心です。

 私は、京セラ創業直後から人の心が経営を決めることに気づき、それ以来、心をベースとした経営を実行してきました。経営者の日々の判断が、企業の性格を決定していきますし、経営者の判断が社員の心の動きを方向づけ、社員の心の集合が会社の雰囲気、社風を決めていきます。

 このように過去の経営判断が積み重なって、現在の会社の状態ができあがっていくのです。そして、経営判断の最後のより所になるのは経営者自身の心であることは、経営者なら皆痛切に感じていることです。

稲盛さんの言葉をお聞きいただきましたが、皆様如何でしょうか。

京セラ創業時のドラマ、経営理念に込めた思い、さらには、働くことの大切さ、盛和塾で訴えかけていたこと、KDDI創業のいきさつと成功秘話、JALを奇跡の再生に導いた鍵など、稲盛さんの生き方、働き方、考え方のエッセンスを、改めて考証してみると、稲盛さんの経営思想、人としての生き様は、まさに報徳思想をそのものではないでしょうか。

それでは、ここで、「致知出版社」との質疑応答をご紹介させていただきます。

取材の締め括りに、「今日まで86年間歩んでこられて、人生で一番大事なものは何だと感じられていますか?」と質問をしたところ、稲盛さんは間を置かず即座に、なおかつ、 熱を込めて、要旨次のように答えられたそうです。

「人生で大事なものが二つある。一つ目は、どんな環境にあろうとも真面目に一所懸命生きること。それともう一つは、人間は常に〝自分がよくなりたい〟という思いを本能として持っていますが、やはり利他の心、皆を幸せにしてあげたいということを、強く自分に意識して、それを心の中に描いて生きていくことです」

ここまでお聞きいただきますと、皆様お分かりの通り、稲盛さんは「至誠、勤労、分度、推譲」を自らの行動規範として貫いた、報徳思想の実践者であり、報徳思想の正しさ・真実性を実証された「現代の経営の神様」に他なりません。
 
(フィロソフィ)
それでは、現代の「経営の神様」稲盛さんから、私たちは、改めていま、
何を学ぶべきでしょうか。

それは「フィロソフィ」ではないかでしょうか。

フィロソフィは、「人として何が正しいのか」 「人は何のために生きるのか」 という根本的な問いに真正面から向き合い、様々な困難を乗り越える中で生み出された仕事や人生の指針、言うなれば「経営哲学」、そのものであると思います。。

このフィロソフィ・経営哲学は、4つの要素から成り立っています。
1つめは、「会社の規範となるべき規則、約束事」であるということです。
この会社はこういう規範で経営をしていきますという、企業内で必要とされる
ルール・モラルが要素の一つとして含まれています。

2つ目は、「企業が目指すべき目的、目標を達成するために必要な考え方」という要素です。企業が目指すべき、高い目標を達成するためにどういう考え方をし、またどういう行動をとらなければならないのか、ということが具体的に述べられているものとなります。
そして、
3つめは、「企業にすばらしい社格を与える」という要素です。
人間に人格があるように企業にも人格があります。会社の人格、つまり「社格」が大変立派であり、お客様や地域社会から「さすが立派な会社だ」と信頼と尊敬を得るための考え方が示されています。

この3つの要素は、企業がさらに発展するためにたいへん重要なものですが、フィロソフィにはそれらのベースとなる大切な4つめの要素があります。

それは、「人間としての正しい生き方、あるべき姿」を示すという要素です。私たち一人一人が、より良い人生をおくるために必要な人生の真理を表しています。

このような4つの要素から成り立つフィロソフィは、知識として理解するのではなく、日々の仕事や生活において実践していくことが何よりも大切です。その実践に向けた弛まぬ努力が、その人の心を高め、人格を磨くことになります。そのようなフィロソフィを共有した人たちが集う集団には、夢と希望にあふれる明るい未来が必ずやひらけることを、稲盛さんは確信していました。

それでは、〇〇グループさんのフィロソフィとは何でしょうか。
どなたか、お話いただけませんでしょうか。

後段の「これからのリーダーシップ」は省略。

【これからのリーダーシップ】

■リーダーの危機感が付加価値を創造する
あなたは、健全な危機感をもっていますか
あなたは、それをチームのメンバーと共有していますか
あなたは、情熱をもって変革にチャレンジしていますか

リーダーの危機感 → 変革 → 付加価値の創造

■良い会社をつくる
組織はリーダーのビジョン以上に大きくはならない
ビジョンはつくり上げるもの、未来もつくり上げるもの
 社員が熱狂するようなビジョンをつくれるか

トヨタは「なぜ」を5回→ 改善できない真因が見つかる
でも、人は理屈だけでは動かない

■リーダーとは
あなたは、学び続けていますか
あなたは、一番先に変われる人ですか
あなたは、社員が望むところまで導いていますか

進歩の最大の障壁は無知ではなく、知っていると思っていることである 

■リーダーの本質を学ぶ (1)
The mediocre teacher tells.
The good teacher explains.
The superior teacher demonstrates.
The great teacher inspires.

凡庸な教師はただしゃべる
よい教師は説明する
すぐれた教師は自らやってみせる
そして,偉大な教師は心に火をつける

■リーダーの本質を学ぶ (2)
Flatter me, and I may not believe you.
Criticize me, and I may not like you
Ignore me, and I may not forgive you.
Encourage me, and I will not forget you.

お世辞を言われたら,あなたのことは信じない
無視されれば,許さない
気づけてくれれば,忘れない

■リーダーの本質を学ぶ (3)
he pessimist complains about the wind.
The optimist expects it to change.
The realist adjusts the sails.

悲観的な人間は、風が出てきたと嘆き
楽観的な人間は、止むのを待つ。
しかし、現実的な人間は、帆を調整する

■リーダーの本質を学ぶ (appendix)
好奇心、これこそが学習というロウソクの芯になる
想像することができるなら、きっとそれを達成することができる
夢見ることができるなら、きっとそれになることができる

実績

企業、銀行、自治体などで「これからの会社経営」、「人的資本の活用・キャリアマネジメント」「東京海上の海外戦略・M&A戦略」「リスクマネジメント」、「内部統制」などのテーマで講演会、勉強会を多数開催。

講演の特徴

東京海上時代は人事(通算13年)と企業営業を柱にキャリアを重ね、常務・専務時代の6年間は人材育成とクライアント支援・社会課題の解決に、監査役としての4年間は「良い会社をつくること」と「リスクを管理すること」この二つに全力を尽くした。講演のテーマは、経営全般、人材マネジメント、M&A(PMI)、リスクマネジメント、内部統制などが中心であるが、依頼者からのオーダーに応じて講演テーマは設定していた。

動画

なし

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